Law and Business

クローズ

1月下旬から関わっていた案件が今日やっとクローズし、様々な人の努力の結晶である書類がクライアントの株主宛に送付されました。

最後まで当局(UKLA)との折衝が続き、昨日は20時間労働(月曜から水曜の累計は50時間。3日間って72時間しかないのでそこそこ激務です)でしたが、おかげさまで明日は休みです。休みと言っても形の上では一応"working from home"なので有給は消化しません。

弁護士をやっていて一番いいなと思うのが、短期間でががっと働いたらその後休みをしっかり取れることですね(他の事務所がどうかは知りませんが)。まぁ今はクローズした案件以外に大した仕事を抱えていないので休めるというのもあるのですが。

再来週はモロッコ旅行なのですが、株主総会の開催日がちょうど休み明けの月曜日なので、外国会社の株主総会に出席というなかなか得がたい経験ができそうです。

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Recommended firms in Japan

旅行ネタ続きだったので前回に引き続き仕事関係のネタを。

イギリスではPLCというサイトが法律関係のデータベースの大御所なのですが、最近世界各国のRecommended firmsを紹介するページが更新されたので、日本のランキングを見てみました。

様々なプラクティスに渡ってLeading/Highly recommended/Recommended/Recognizedという格付けをして各事務所の強み・弱みを一覧表にしています。

独断でLeadingを5点、Highly recommendedを3点、Recommendedを2点、Recognizedを1点とした結果、10点以上の事務所は以下のような結果になりました(10点未満の事務所も44箇所掲載されています)。なおこの格付けはあくまで外人の視点から見ているものなので、実際に日本で仕事をしている方々は「おや」と思う部分もあると思いますが、あくまで参考情報として見て下さい。事務所の並びはPLCで並べられていた順です。

NOT 43点

N&A 38点

AMT 33点

MHM 34点

Mofo 36点

Baker & Mckenzie 30点

White & Case 26点

Freshfields 26点

Herbert Smith 15点

Linklaters 16点

Clifford Chance 13点

Lovells 14点

三井 11点

Simpson Thacher 12点

Skadden Arps 12点

TMI 11点

Allen & Overy 10点

ちなみに評価の対象となっていたプラクティスエリアは以下のととおりです。

バンキング・ファイナンス
キャピタルマーケット
独禁
不動産
コーポレート・M&A
紛争
エネルギー
環境
IP
労働
ライフサイエンス
個人顧客
プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル
リストラクチャリング
税務

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お国が違えば・・・

現在関わっている案件で出くわしたシーン。

現在Class 1 circular と呼ばれる当局宛ファイリング書類の作成に関与しています。日本のEDINETと同様、この書類はワードファイルでは提出できないため、印刷会社を通じて特殊なファイルに変換してもらいます。

当然色々な当事者がコメントをしてくるため、印刷会社に何度もコメントを投げて、彼らがアップデートしたドラフトを当事者に回し、さらにコメントを集め・・という作業を行うのですが、そんな作業の中で驚愕の一幕がありました。

コメントを集める中でドラフトのバージョンが1,2,3・・・と振られていくのですが、最新のバージョンをレビューしていなかった当事者が「過去に自分がレビューしたバージョンと当局にファーストドラフトとして提出されたバージョンのコンペアが欲しい」と言ってきました。ローファームが作成するワードドキュメントではこれは簡単に出来るので、おそらく印刷会社も出来るだろうと思いメールを送ると、

「我々は最新のバージョンのみデータとして保存しているので、過去のバージョン同士のコンペアはできない」

との返事が。

上司に報告すると「明日もう一度電話で確認しろ」と言われたので今日電話で確認したのですが、担当者の返事は前日のメールと同様。

ロンドンの実務はそんなものなのかと思って上司に報告すると、怒った上司が「こんなものはできるはずだろ。すぐに送ってよこせ!」と語気鋭いメールを担当者に直送。

その結果

「内部で確認したところ、これはできるとのことなので、大至急送ります」

との返事が返ってきました。

可能かどうかが微妙なタスクであればいざ知らず、ルーティンで行われているはずの作業に関してバレバレの嘘を顧客につくという神経が日本人としてはどうにも理解できず、驚きました。

そういえばビザの問題でも、早急なビザの手続が必要な知人が勤め先の事務所を通じて雇っている移民法弁護士に対して

「○月○日に面接を入れて欲しい」

と依頼したところ

「その日は他の顧客のための枠なので使えない」

と言われ、めげずに自分はどうしてもその日に面接を受ける必要があると強調したところ、

「じゃあ○月○日に面接を入れます」

となった話を聞きました。

レストランの予約でも、

「午後7時から4名で」

とお願いすると

「8時15分からなら4名で受けられる。どうしても7時からでないといけないのか」

と言われ、7時からでないといけないから7時から予約を入れようとしているのだから当たり前だろうと思いつつも後ろに予定が詰まっているから7時からでないといけないんだと強調すると

「分かったじゃあ7時から4名で」

と予約が取れたりします。

何なんですかね、この国は・・・。

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グローバルファームの売上

イギリスの新人弁護士との2週間半に渡る研修が終わり、一息つきました。

一息ついたのと同じタイミングで、毎週配布されるLegal Weekにグローバルファームの売上をはじめとした興味深い数字が載っていたので、今日はそれをご紹介。

2008年度の売上トップ5は以下のとおり。

1.  Clifford Chance (UK) 26.6億ドル
2.  Linklaters (UK) 25.8億ドル
3.  Freshfields (UK) 23.5億ドル
4.  Baker&Mckenzie (US) 21.8億ドル
5.  Skadden Arps (US) 21.7億ドル

2008年度に売上が20億ドルを超えた事務所は8、10億ドルを超えた事務所は17でした。

弁護士一人あたりの売上は、上述トップ5のうち1つを除いて100万ドル前後、Profit per Equity Partner (PEP:パートナー1人あたりの利益)はトップ5に入っているUKファームに関しては皆200万ドルを超えており、UKファームのPEPトップ5にいずれも名を連ねております。

恥ずかしながら今まで私はグローバルな法律事務所がどのくらいの売上を上げているか等の数字を見たことがなかった(日本ではこういった情報を見かけることはまずない)のですが、今回この記事を見てびっくり。2000億円とか売ってるんですね。法律事務所は純粋にサービスを売っている業態なので、形のないものを売ってここまで数字を挙げる業態って他にあまりないんじゃないかと思います。

しかもPEPに記事で公表されている各事務所のパートナー数を掛けると、トップ5に名を連ねているUKファームは売上の30%強から40%強がパートナーの取り分になっており、これまた驚きの数字です。それっておいしすぎませんか?

こちらに来てから読んた所内誌で、「我が事務所のパートナーの1人が、『ロンドンで最もセクシーな億万長者弁護士』のベスト3に選ばれました」なんて記事が載っていましたが、なるほどこの数字を見れば納得です。

ちなみにこのランキング、トップ100までランキングを発表していましたが、日本の事務所は名を連ねていませんでした。ちなみに100位の事務所の売上は3億5千万ドルです。UK、US以外ではオーストラリアから幾つかランクイン、あとEU諸国からローカルな事務所が幾つかランクインという感じです。

もっとも最近の金融市場の混乱により、Legal Weekでも各事務所の人員削減の記事をあちこちに載せていますので、業界全体として楽観できる状況ではないのは確かだと思います。

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Yahoo!遂に追い詰められたか

長らく大きな進展のなかったYahoo!の件ですが、今週遂に本格的に動き出しましたね。

Microsoft Sends Letter to Yahoo! Board of Directors
http://www.microsoft.com/presspass/press/2008/apr08/04-05LetterPR.mspx

Yahoo!'s Board of Directors Responds to Latest Microsoft Letter
http://yhoo.client.shareholder.com/press/releasedetail.cfm?ReleaseID=303369

Microsoftが3週間以内に合意に至らない場合にはProxy Fightも辞さないと強い姿勢に出たのに対し、Yahoo!側はMicrosoftの提案が株主価値を最大化するのであればMicrosoftの提案に反対はしないとの姿勢を取っています。個人的な感想としては、八方塞がりのYahoo!の態度が従前に比べてやや軟化したような印象を受けます。Yahoo!はMicrosoftが1月にディールを公表した後これだけ長い間に渡って色々な代替策に奔走していたもののこれといった案が出ていない(News CorporationやTime Warner参加のAOLと交渉中とのことですが、実現可能性については未知数)ことから、かなり苦しい立場に立たされていると思います。

アメリカのメディアの動向を見ても、この状況だとYahoo!は最終的にMicrosoftに買収されるだろうとの見方が大勢を占めているようです(もっとも価格の引き上げが必要だとの見方が強いようですが)。価格に関してはMicrosoftはこれ以上の引き上げはしないことを今回のプレスでも暗示しているように読めます。

このまま買収が成立するようだと、Microsoftの一発目のベアハグレターがうまい具合にはまったということになるのでしょう。年が明けてからはアメリカでは景気後退の懸念から後ろ向きなニュースばかりが新聞紙上を賑わせているので、Yahoo!のホワイトナイトになりうる連中もそれどころではない状況にあるというのも大きいかもしれません。

余り深く考えずにつらつらと書いてみましたが、3週間以内には次の大きな動きがあるものと思います。当事者でなく外から眺めている立場からはいよいよ面白くなってきました・・

と書いている間にNew York Timesで新たな記事がアップされていました。

Microsoft Said to Be Talking With News Corporation About Joint Yahoo Bid
http://www.nytimes.com/2008/04/10/technology/10google.html?_r=1&hp&oref=slogin

MicrosoftがNewsと組むことが出来れば買収価格を引き上げられる可能性も高まり、更に現在Newsと交渉中であると報じられているYahoo!の選択肢をますます狭めるとのことで、Yahoo!側にとってはますます追い詰められた状況になってますね。

Newsと交渉中であることをプレスすることでNewsがYahoo!側に付く動きをけん制する効果もあると思います。本件ではMicrosoftが常に先手先手を打っている感じですね。

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4月10日 追記

Yahoo!側も新たな動きを見せています。

News Corp., AOL Pursue Yahoo Deals
http://online.wsj.com/article/SB120776803032602423.html?mod=hpp_us_whats_news

ざっくりまとめると、AOLとYahoo!を統合した上で、Time Warnerが統合後の会社の20%を保有し、Yahoo!はこれにより得るキャッシュで自社株を1株30‐40ドルの間で買い戻すというプランのようです。

AOLはTime Warnerにとってお荷物部門なので(AOLとTime Warnerの合併は、こちらの授業では史上最悪のM&Aディールと言われています)、これを見る限りでは、Time WarnerがYahoo!が苦しんでいるのをいいことに、コレ幸いとこれを契機にAOLを切り離してしまおうと画策しているようにも見えます。上記WSJの記事によればAOLを100億ドルと評価しているようですが、果たしてそれだけの価値があるんでしょうか(ダイアルアップ事業以外にAOLが具体的にどんな事業を営んでいるかイマイチ知らないので何ともいえないのですが。ちなみにダイアルアップ事業は今回の統合の対象外だそうです)。買収のターゲットになった企業がこのように防衛的買収に出るときには得てして買収対象のバリュエーションが高めに設定されがちなことから、これが果たしてYahoo!株主に利する統合なのかは慎重に見極める必要があると思われます。

記事によればYahoo!がこの手に打って出るにはYahoo!株主の決議が必要なところ、これが得られるかは不透明だそうです。そりゃYahoo!株主にしてみれば、お荷物部門を押し付けられる(そしてMicrosoftが提示しているプレミアムと同額のプレミアムこの統合により得られる(これすら不透明)まで待たされる)よりも、今すぐプレミアムを手にできるMicrosoftのディールの対価を受け取った方がいいと思われるので、ちょっと考えただけでも株主の賛同が得られなそうな感じではないですが。

精緻な分析をしようと思うともっと深く考えないといけないのですが、今日から3日ほど車でスモーキーマウンテン国立公園までドライブ旅行に行ってくるので、思いついたことを書き連ねるところまでにします。

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Microsoft、Proxy Fightに突入か

Yahoo2

Yahoo!が2月11日付でMicrosoftの1株31ドル相当の提案を「不当に安過ぎる」とするコメントを発表しました(プレスリリースを見る限りrejectという言葉は使っていないので、拒絶というのは若干ミスリーディングというコメントが受講中の授業内でありました)が、これを受けてついにMicrosoftがProxy fightに乗り出すようです。

Microsoft Said to Plan Proxy Fight for Yahoo http://www.nytimes.com/2008/02/20/technology/20yahoo.html?_r=1&scp=3&sq=microsoft+yahoo&st=nyt&oref=slogin

記事によれば、Microsoftが取り得る選択肢の中ではProxy fightが余りコストをかけずにYahooにプレッシャーをかけることができる方法ということで検討されているようです(ちなみに提示価格を1ドル上げるごとに買収コストは14億ドルずつ嵩むそうです)が、それにしても費用が2000万-3000万ドルというのは高いなぁという印象です。日本の実務でProxy fightも経験しましたが、金額が1桁違います。まぁ総額が4兆円を越えるディールなので、このくらいの出費で風向きを変えることができるのであれば安いものなのかもしれません。

対するYahoo!は新たな退職金制度を導入したそうで、これは買収後に従業員が退職する場合にはポジションに応じて退職後も基本給を4ヶ月-24ヶ月分支給するというプランのようです。

現在受講しているRestructuring Firms and IndustriesのYermack教授によれば、敵対的買収のターゲットとなった会社がGolden Parachute(現経営陣が退陣する際に巨額の退職金を支払うアレンジにすることで買収者を退けようとする防衛策の一種)を導入すると市場はディールが成立する可能性が高くなったと受け取るそうです(何故ならGolden Parachuteは実際に買収が成功した場合に発動される性質のものであるため、ターゲットの経営陣がこれを検討し始めるということは買収を受け入れざるを得ない流れの中での最後の抵抗と捉えられるから)。個人的には今回のYahooの退職金制度もこれと同列に捉えることができるような気がします。プレスリリースの中で明確に"reject"という言葉を用いなかったのもこの辺りとの絡みがあるのではないでしょうか。

もっともYahooの主要株主もMicrosoftによる買収自体は歓迎しているものの、価格にはまだ不満があるようなので、ディールの成立は価格次第で、単純にProxy fightを仕掛けるだけで事態を打開することは出来ないと思います。もっとも、Yahooに対するunsolicited offerを発表した2月1日からMicrosoftの時価総額は13.6%も下落しているので(既に時価総額にして買収提示額相当の400億ドル以上を失っている)、市場がこのディールに対して悲観的な評価を下している状況下でMicrosoftが価格を引き上げるのはかなり難しい判断になりますね。もっともProxy fightの風向きを見ながら「これはいけそうだ」という状況になった場合には最終的に提示価格を引き上げ、その結果Yahoo側も折れるというシナリオになるような気がします。

買うほうも買われる方もそれぞれの株主の利益を最大化するために最善と思われる行動を取らないといけないので、しばらくはギリギリのせめぎ合いが続きそうな印象です。

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MicrosoftとYahoo!の株価

Yahoo_ms

現状Yahoo!の経営陣がMicrosoftの提案を真摯に検討中という状況で新たな動きがありませんが、今週の授業で早速本件が幾つかの授業で話題に挙がりました。

MicrosoftがYahoo!に対するunsolicited offerを発表してから2日程で、Yahoo!の株価は19ドル付近からMicrosoftのoffer priceである31ドルの付近まで50%近く上がりました。これに対してMicrosoftの株価は発表後下落しています(発表後数日でMicrosoftは時価総額にして180億ドル程度を喪失したと授業では説明を受けました)。

Yahoo_ms2

両社の株価はなぜこのような動きを見せるのでしょうか。

Yahoo!の方は比較的想像しやすいですね。このようなbidが公表されると、アービトラージで鞘抜きを狙おうとする投資家が対象会社の株を買い漁ります(その結果株価がoffer price近辺まで急騰する)。購入単価の平均がoffer priceより少し安いところでも、ディールの成立によるexitが可能であれば、株式を大量に保有しているためアービトラージにより相当な金額を鞘抜きできます(ディールが成立しなければ高値で株を掴まされた形になる)。

M&Aの授業を担当するワクテルリプトンの弁護士によれば、アービトラージを狙う投資家(略してarbsと呼ぶそうです)が入ってきた場合は、彼らが鞘抜きに成功するためにはディールの成立が絶対条件なので、彼らはディールの成立に向けて協力してくれる。したがって彼らをどのように扱うかがディールの行方を左右すると言っていました。

ではMicrosoftの株価が発表直後に下落したのはなぜでしょう?この点は教授によって説明が異なっていたのが興味深いです。

Stern(ビジネススクール)の教授は、市場がefficientである(つまり、公表された情報は直ちに株価に反映される)ことを前提として、これは市場がディールの成立を悲観的に見ている(特に独禁法のハードルをクリアできる可能性が低いと考えている)ことの証左であると説明していました。

他方ワクテルリプトンの弁護士は、これは投資家(特にarbs達)がリスクをヘッジするためにYahoo!を買ってMicrosoftを売るという行動に出ているためであると説明していました。
このような行動を取ることによりなぜリスクがヘッジできるかという点については詳しい説明はなかったのですが、私はディール成立を前提としたフローバック対策なのではないかという印象を受けます。

フローバックとは、株式を対価としたM&Aが成立後、買収者の株式を交付された対象会社の元株主が、自らの株式と引き換えに交付された買収者の株式をディール成立後に売却することが買収者の株価の下落要因になるという現象です。
日本では上場会社のTOBの対価は私の知る限り100%キャッシュだったのでこのような問題は今まであまりフォーカスされてきませんでしたが、例えばクロスボーダーかつ対価に株式が含まれるディールを考えた場合、クライスラーの株式を保有していたのにその一部がダイムラーの株式になってしまったりしたら、「ドイツの会社の株なんて持ってても仕方がない」と思う元クライスラーの株主がダイムラー株式を市場で売却することは容易に想像がつきます。
シティによる日興コーディアルグループの買収の場合には元日興コーディアル株主に交付される対価がシティの株式なので、理屈の上ではフローバックが起きる可能性はあります。もっともシティの株価がサブプライムの影響で下落したとはいってもシティの時価総額はかなりの額なので、仮に日興コーディアルの株主に交付されたシティ株式が売り浴びせられたとしてもシティの株価に大した影響はないと思いますが。

昨夏からのサブプライム問題によりM&Aのディールの数が減少していて教授としても最近の事例として取り上げる題材がないなぁと思っていたようですが、本件を追うだけでも様々な人の意見を授業で聞くことができ、色々な視点が得られそうです。

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Microsoft v. Google

Yahoo

先週金曜にMicrosoftがYahoo!に対して総額44.6億ドルのunsolicited offerを提案し、新聞やネットを賑わせているのは周知の通りです。

潜在的な敵対的買収の案件として大規模であることもさることながら、敵対的買収がタブーとされていたネット業界で、巨人Microsoftがそのタブーを破った点が2月2日付のWSJで大きくフォーカスされていました。
WSJでは、ネット業界で敵対的買収がタブーとされていた理由について、買収によるコスト削減効果よりも、ネット企業は自らの事業の成長に主眼を置くべきであるとの考えが業界を支配していた点にあると説明しています。
もっとも、マイクロソフトが2004年に総額320億ドルの巨額の特別配当を実施している(こちらを参照)ことからも分かるように、ハイテク企業も市場の成熟により新たな成長機会の模索に苦戦するようになり(したがって配当原資を有効活用する投資先がなく、株主に還元せざるを得ない。日本では成長余力の乏しくなったIT関連企業が投資事業部門を立ち上げて投資事業で食いつないでいたりするようですが、これも自らのビジネスモデルの限界(若しくは企業努力の限界)を示しています。)、市場がここまで成熟するとハイテク企業と言ってももはやその他の業界と変わらない戦略(つまりM&Aによるコスト削減効果)を取らざるを得ないステージにきたと言えるのではないでしょうか。

提案を受けたYahoo!経営陣は取締役のfiduciary dutyの観点からこの提案を真摯に検討しなければならないわけですが、Yahoo!がGoogleとの提携を検討しているとのニュースが既に流れており、それに呼応するかのようにGoogleのChief Legal OfficerがYahoo!の買収提案は独禁法に抵触する可能性があると表明しています(日本でも、業界最大手の王子製紙が北越製紙に対して敵対的買収を仕掛けた際に、業界第三位の大王製紙が独禁法抵触の可能性を指摘したのは記憶に新しいところです)。

WSJの電子版を見ると、GoogleがYahoo!を全面支援すると表明しているようですが(ソースはこちら)、Googleのネットの検索マーケットにおけるシェアの大きさを考えると、同マーケットにおいてGoogleがYahoo!を直接買収するのは(MicrosoftがYahoo!を買収するより遥かに)独禁法のハードルが高そうなため、直接買収の可能性は低いとのこと。
WSJは、Google以外にこのディールに参加してくる可能性のある企業としてAT&T、(WSJの出版元であるDow Jones & Co.を所有する)News Corp、Time Warnerの名前を挙げています(いずれの企業も現段階で参戦する気配はないようです)。

いずれにしても今後の世界のネット業界の動向に大きく影響を与えるこのディールの行方からしばらく目が離せなくなりました。

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Venture capital in US

授業が始まって三週目に入ったにも関わらず、3コマも授業がある月曜日が先週お休みだったためにだいぶのんびりと過ごしております。

ビジネススクールとのジョイント授業で今週から開講する講義もあるために、春学期の選択科目のエントリはもう少し後回しにしようかと思っていますが、今日は受講中のVenture Capitalの授業からのお話を。

今日が実質初回の授業で、VCによるStart-up investmentの話でした。起業家が新規事業のアイデアをVCに持っていき、VCの資金を元に組織(Corporationの形態か、あるいはPartnershipやLLCの形態かは今後の授業で議論する模様)を立ち上げるという話なのですが、そういった形態のVC投資は日本から来た人間からすると「随分とアグレッシブな投資スタンスだなぁ」と思わせるものだったので、講師(自らもVCを運営している弁護士。この辺もアメリカらしいですね。)に聞いてみたところ、成功するベンチャーの3分の1くらいはこの形でVCから投資を受けて事業をスタートさせているのではないかとのことでした。

個人的には結構凄い割合だな、と思ったのですがいかがでしょうか。

だって、単純に言ってしまえば、ビジネスモデルのプレゼンだけ聞いて、「よし、じゃあお前の会社に投資する」という決断をして、結構な金額を投資する(実際にはハードな交渉をして大部のドキュメンテーションをまとめ上げる作業がありますが)わけですから。そんなアグレッシブな投資スタンスは日本のVCではあまり聞いたことがないですね。

授業では、VCが新たに設立された組織の40%を100万ドルで引き受けるという例を出した上で、起業家側・VC側の立場からはどのようなCapital Structureがよいかという議論をしたのですが、講師の話によればアメリカのVCは1000万ドルくらいの金額でもStart-up investmentで出すことがあるとのこと。

投資判断をする段階で会社が存在しないわけですから、バリュエーションはどうするんだろうと思って聞いたところ、VCは過去の経験により投資対象が平均的な投資期間(VCにより3年や5年)経過後どのくらいの金額でExitできるかを予想し、自らの目標とするリターン率で割り引いた金額を提示するそうです。start-upの段階で投資するVCの目標は5年で800-1,000%だそうでして、「この会社は5年後に1億ドルでExitできる」と判断すれば、start-upの段階で例えば1,000万ドルを投資するとのこと。

「これによってアメリカは繁栄しているんだよ」と講師は言っておりましたが、親しい起業家の友人から聞く日本のベンチャーキャピタルの投資スタンスや投資規模との違いにただ驚くばかりです。

もっとも、投資はしたものの早々に見切りをつけて会社を清算するということもあるようでして、そのような場合に備えてVCは優先株や社債にLiquidation preferenceの条項を盛り込むことによって投資資金の回収を確実にするとのこと。
上述の例で言えば、VCが株式の40%を100万ドルで取得し、立ち上げから3ヶ月経過し資金が80万ドルまで目減りした後に、「やり始めてみたけどやっぱ無理そうだから清算しよう」という話になった場合、仮にVCが100万ドルの投資と見返りに40%の普通株式を取得していると80万ドルの40%=32万ドルしかVCの手元には帰ってこないことになります。
しかし元手の100万ドルを丸々投資したのはVCなので、VCが残額80万ドルを全額受け取るべきであり、そのために新規事業を清算する場合にはVCが投資額を先に回収し、余った残り(がもしあるのであれば)を株式の所有割合に応じて分配するというアレンジを取るようです(したがって、上述のVCが普通株式40%を100万ドルで取得するという例はVCにとっては望ましい投資スキームではなく、Liquidation preferenceを条項として織り込める優先株や転換社債での投資が望ましい。もっとも、デラウェア会社法下ではequity subordinationというコンセプトがあり、会社の大株主が同時に会社に貸付をしていた場合、当該大株主が会社に対して有する債権が一般債権者に劣後する形で取り扱われるリスクが存在する点には注意が必要)。

日本のVCの投資スタンスは、聞いたところでは「大手VCの○○さんが出資するのであればうちも」というところもあるらしく、VCによっては自分の頭で考えてリスク分析をした投資判断ではないそうで(もっとも銀行系のVCであったりすれば社内での調整等がかなり面倒ではないかと思いますので、仕方のない面もあるのかもしれませんが)。

アメリカでは、起業家側もVC側も競争が激しく、過去に会社を立ち上げてうまくExitさせた経験のある起業家の新規事業などではVCは投資条件をお互い競い合うらしく(したがって起業家が投資条件の交渉上優位に立つ)、存在するプレーヤーの数が多くマーケットが成熟しているために、前述した日本のVCのような他社追随型の投資スタンスでやっていけるVCはアメリカでは存在し得ないのかもしれません。

新聞等を読んでいると、やはりアメリカでも「ベンチャーに大金を投入するのはいかがなものか」という考え方もあるらしく、投資金額を日本のVC並みに抑えた投資をして成功しているVCもあるという話もあるようですが、起業家側でもVC側でもリスクを取って何かをやるということが受け入れられ、評価される社会は健全な気がします。

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東証による第三者割当規制

著名ブロガーである大阪は山口先生のブログや大杉教授のブログを見て知りましたが、東証が第三者割当に関する自主規制を検討しているようですね。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20080107mh01.htm

今日はこの点にフォーカスしてみようかと思います(なお、弁護士blogのお決まり文言ですが、当エントリーに記載する内容はLLM生としての私の個人的な見解であり、私が所属する団体の見解ではございません。また、私は日本法の専門家であるため、NYSEの自主規制等アメリカにおける規制の詳細については専門家にご相談下さい)。

東証が検討している自主規制はNYSEの自主規制を参考にしているのではないかと思われますが、NYSEの自主規制の文言は以下のようになっています。

New York Stock Exchange Listed Company Manual(原文はこちら)
312.03 Shareholder Approval

Shareholder approval is a prerequisite to listing in the following situations:

(c) Shareholder approval is required prior to the issuance of the common stock, or of securities convertible into or exercisable for common stock, in any transaction or series of related transactions if...(1) the common stock has, or will have upon issuance, voting power equal to or in excess of 20 percent of the voting power outstanding before the issuance of such stock or securities convertible into or exercisable for common stock...However, shareholder approval will not be required for any such issuance involving:

  • any public offering for cash;
  • any bona fide private financing, if such financing involves the sale of:
  • common stock, for cash, at a price at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock; or
  • securities convertible into or exercisable for common stock, for cash, if the conversion or exercise price is at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock.

ざっくり言えば、総議決権の20%以上の普通株式(あるいは普通株式にconvertすることが可能な証券)を発行する場合にはNYSEルール上事前の株主総会決議が必要ということです。

Corporationの授業で取り扱うケースなどでも、ホワイトナイトへの割当が行われるケースなどでは、当該ルールにより要求される株主総会決議を回避するために、発行する普通株式を19.9%に留めるなどの方策が取られていました。

私はコーポレートの弁護士であったので、留学前には種々の買収案件に関するアドバイスを提供していました。敵対的な買収を検討する場合、対象会社が取りうる対抗策とその可能性・防衛策としての有効性を必ず検討した上でクライアントに説明するのですが、防衛策として一番頭を悩ませるのが第三者割当なんですよね。

第三者割当の差し止めの根拠としては有利発行と不公正発行があるわけですが(株式につき会社法210条、新株予約権につき247条参照)、ベルシステム24等の先例が存在することから、たとえ相当数の株式を買い集めることに成功したとしても、第三者割当による大幅な希釈化(dilution)のリスクは拭い去れないわけで、第三者割当のリスクは買収者を踏みとどまらせるかなり大きな要因になっていたのではないかと思います。

防衛策としての第三者割当は日本以外ではあまり一般的ではないと思われるため、外人のボスや日本の状況をあまり知らない外人のクライアントなどに対して第三者割当が強力な防衛策として機能しうることを説明すると驚かれたりしました。

世界のM&Aマーケットを見ると国境を越えた企業の合従連衡が数多く目に付き、もはや日本もその趨勢を傍観しているわけにはいかない状況ではないかと思うのですが、このような状況の中で、日本特有の(しかも恣意的に行使される可能性が否定できない)防衛策が制約される方向で検討がなされることは、大きな視点で見ればよいことなのではないでしょうか(ロースクールの授業では"good for corporate America"という表現を使うことが多いので、"good for corporate Japan"といったところですかね)。

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