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東証による第三者割当規制

著名ブロガーである大阪は山口先生のブログや大杉教授のブログを見て知りましたが、東証が第三者割当に関する自主規制を検討しているようですね。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20080107mh01.htm

今日はこの点にフォーカスしてみようかと思います(なお、弁護士blogのお決まり文言ですが、当エントリーに記載する内容はLLM生としての私の個人的な見解であり、私が所属する団体の見解ではございません。また、私は日本法の専門家であるため、NYSEの自主規制等アメリカにおける規制の詳細については専門家にご相談下さい)。

東証が検討している自主規制はNYSEの自主規制を参考にしているのではないかと思われますが、NYSEの自主規制の文言は以下のようになっています。

New York Stock Exchange Listed Company Manual(原文はこちら)
312.03 Shareholder Approval

Shareholder approval is a prerequisite to listing in the following situations:

(c) Shareholder approval is required prior to the issuance of the common stock, or of securities convertible into or exercisable for common stock, in any transaction or series of related transactions if...(1) the common stock has, or will have upon issuance, voting power equal to or in excess of 20 percent of the voting power outstanding before the issuance of such stock or securities convertible into or exercisable for common stock...However, shareholder approval will not be required for any such issuance involving:

  • any public offering for cash;
  • any bona fide private financing, if such financing involves the sale of:
  • common stock, for cash, at a price at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock; or
  • securities convertible into or exercisable for common stock, for cash, if the conversion or exercise price is at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock.

ざっくり言えば、総議決権の20%以上の普通株式(あるいは普通株式にconvertすることが可能な証券)を発行する場合にはNYSEルール上事前の株主総会決議が必要ということです。

Corporationの授業で取り扱うケースなどでも、ホワイトナイトへの割当が行われるケースなどでは、当該ルールにより要求される株主総会決議を回避するために、発行する普通株式を19.9%に留めるなどの方策が取られていました。

私はコーポレートの弁護士であったので、留学前には種々の買収案件に関するアドバイスを提供していました。敵対的な買収を検討する場合、対象会社が取りうる対抗策とその可能性・防衛策としての有効性を必ず検討した上でクライアントに説明するのですが、防衛策として一番頭を悩ませるのが第三者割当なんですよね。

第三者割当の差し止めの根拠としては有利発行と不公正発行があるわけですが(株式につき会社法210条、新株予約権につき247条参照)、ベルシステム24等の先例が存在することから、たとえ相当数の株式を買い集めることに成功したとしても、第三者割当による大幅な希釈化(dilution)のリスクは拭い去れないわけで、第三者割当のリスクは買収者を踏みとどまらせるかなり大きな要因になっていたのではないかと思います。

防衛策としての第三者割当は日本以外ではあまり一般的ではないと思われるため、外人のボスや日本の状況をあまり知らない外人のクライアントなどに対して第三者割当が強力な防衛策として機能しうることを説明すると驚かれたりしました。

世界のM&Aマーケットを見ると国境を越えた企業の合従連衡が数多く目に付き、もはや日本もその趨勢を傍観しているわけにはいかない状況ではないかと思うのですが、このような状況の中で、日本特有の(しかも恣意的に行使される可能性が否定できない)防衛策が制約される方向で検討がなされることは、大きな視点で見ればよいことなのではないでしょうか(ロースクールの授業では"good for corporate America"という表現を使うことが多いので、"good for corporate Japan"といったところですかね)。

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