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Venture capital in US

授業が始まって三週目に入ったにも関わらず、3コマも授業がある月曜日が先週お休みだったためにだいぶのんびりと過ごしております。

ビジネススクールとのジョイント授業で今週から開講する講義もあるために、春学期の選択科目のエントリはもう少し後回しにしようかと思っていますが、今日は受講中のVenture Capitalの授業からのお話を。

今日が実質初回の授業で、VCによるStart-up investmentの話でした。起業家が新規事業のアイデアをVCに持っていき、VCの資金を元に組織(Corporationの形態か、あるいはPartnershipやLLCの形態かは今後の授業で議論する模様)を立ち上げるという話なのですが、そういった形態のVC投資は日本から来た人間からすると「随分とアグレッシブな投資スタンスだなぁ」と思わせるものだったので、講師(自らもVCを運営している弁護士。この辺もアメリカらしいですね。)に聞いてみたところ、成功するベンチャーの3分の1くらいはこの形でVCから投資を受けて事業をスタートさせているのではないかとのことでした。

個人的には結構凄い割合だな、と思ったのですがいかがでしょうか。

だって、単純に言ってしまえば、ビジネスモデルのプレゼンだけ聞いて、「よし、じゃあお前の会社に投資する」という決断をして、結構な金額を投資する(実際にはハードな交渉をして大部のドキュメンテーションをまとめ上げる作業がありますが)わけですから。そんなアグレッシブな投資スタンスは日本のVCではあまり聞いたことがないですね。

授業では、VCが新たに設立された組織の40%を100万ドルで引き受けるという例を出した上で、起業家側・VC側の立場からはどのようなCapital Structureがよいかという議論をしたのですが、講師の話によればアメリカのVCは1000万ドルくらいの金額でもStart-up investmentで出すことがあるとのこと。

投資判断をする段階で会社が存在しないわけですから、バリュエーションはどうするんだろうと思って聞いたところ、VCは過去の経験により投資対象が平均的な投資期間(VCにより3年や5年)経過後どのくらいの金額でExitできるかを予想し、自らの目標とするリターン率で割り引いた金額を提示するそうです。start-upの段階で投資するVCの目標は5年で800-1,000%だそうでして、「この会社は5年後に1億ドルでExitできる」と判断すれば、start-upの段階で例えば1,000万ドルを投資するとのこと。

「これによってアメリカは繁栄しているんだよ」と講師は言っておりましたが、親しい起業家の友人から聞く日本のベンチャーキャピタルの投資スタンスや投資規模との違いにただ驚くばかりです。

もっとも、投資はしたものの早々に見切りをつけて会社を清算するということもあるようでして、そのような場合に備えてVCは優先株や社債にLiquidation preferenceの条項を盛り込むことによって投資資金の回収を確実にするとのこと。
上述の例で言えば、VCが株式の40%を100万ドルで取得し、立ち上げから3ヶ月経過し資金が80万ドルまで目減りした後に、「やり始めてみたけどやっぱ無理そうだから清算しよう」という話になった場合、仮にVCが100万ドルの投資と見返りに40%の普通株式を取得していると80万ドルの40%=32万ドルしかVCの手元には帰ってこないことになります。
しかし元手の100万ドルを丸々投資したのはVCなので、VCが残額80万ドルを全額受け取るべきであり、そのために新規事業を清算する場合にはVCが投資額を先に回収し、余った残り(がもしあるのであれば)を株式の所有割合に応じて分配するというアレンジを取るようです(したがって、上述のVCが普通株式40%を100万ドルで取得するという例はVCにとっては望ましい投資スキームではなく、Liquidation preferenceを条項として織り込める優先株や転換社債での投資が望ましい。もっとも、デラウェア会社法下ではequity subordinationというコンセプトがあり、会社の大株主が同時に会社に貸付をしていた場合、当該大株主が会社に対して有する債権が一般債権者に劣後する形で取り扱われるリスクが存在する点には注意が必要)。

日本のVCの投資スタンスは、聞いたところでは「大手VCの○○さんが出資するのであればうちも」というところもあるらしく、VCによっては自分の頭で考えてリスク分析をした投資判断ではないそうで(もっとも銀行系のVCであったりすれば社内での調整等がかなり面倒ではないかと思いますので、仕方のない面もあるのかもしれませんが)。

アメリカでは、起業家側もVC側も競争が激しく、過去に会社を立ち上げてうまくExitさせた経験のある起業家の新規事業などではVCは投資条件をお互い競い合うらしく(したがって起業家が投資条件の交渉上優位に立つ)、存在するプレーヤーの数が多くマーケットが成熟しているために、前述した日本のVCのような他社追随型の投資スタンスでやっていけるVCはアメリカでは存在し得ないのかもしれません。

新聞等を読んでいると、やはりアメリカでも「ベンチャーに大金を投入するのはいかがなものか」という考え方もあるらしく、投資金額を日本のVC並みに抑えた投資をして成功しているVCもあるという話もあるようですが、起業家側でもVC側でもリスクを取って何かをやるということが受け入れられ、評価される社会は健全な気がします。

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コメント

この考え方の違いが10年後の未来を大きく分けるのだと思います。

VCからの投資希望は今もひっきりなしに来ますが、スケールも発想も担当者も、全てが貧弱です。(ごくごく一部、例外が無くも無いですが…)

シードやアーリーであれば、日本での平均的な投資額は3000~5000万円であり、1億円以上の投資がなされることは現在では極めてレアであり、何らかの理解しうる理由が無い限り、つまり、本当にアドベンチャーな投資では1社で1億円以上というのはまず無いです。

ミドルでも1億円以上だと結構大きな案件となり、5億円以上、10億円以上となると、よほどの有望案件で、かつレイターでもない限り、まずありません。

おそらく日本という国には本当の意味でのベンチャーマインドは根付かなかったんだと思いますね。

祖国の凋落をリアルタイムで感じているのに、一介の経営者では何も出来ないことは、とても無念と言う言葉だけでは表現しきれない辛さがあります。

投稿: kawabata | 2008年1月29日 (火) 20時54分

>kawabataさん
実際に現場にいると色々と感じるところがあるのだろうと思います。

日本人は全体的に見てリスクを回避する傾向が強いのかもしれませんね。

逆にアメリカでは不動産にサブプライムローンで投資した結果、自らの年収を超える金利負担がのしかかってきた結果破綻する人が結構いるそうなので、深く考えずただ単純にリスク志向が高いのも考えものなのかもしれませんが。

投稿: yutakataka | 2008年2月 3日 (日) 04時57分

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