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2008年1月

Venture capital in US

授業が始まって三週目に入ったにも関わらず、3コマも授業がある月曜日が先週お休みだったためにだいぶのんびりと過ごしております。

ビジネススクールとのジョイント授業で今週から開講する講義もあるために、春学期の選択科目のエントリはもう少し後回しにしようかと思っていますが、今日は受講中のVenture Capitalの授業からのお話を。

今日が実質初回の授業で、VCによるStart-up investmentの話でした。起業家が新規事業のアイデアをVCに持っていき、VCの資金を元に組織(Corporationの形態か、あるいはPartnershipやLLCの形態かは今後の授業で議論する模様)を立ち上げるという話なのですが、そういった形態のVC投資は日本から来た人間からすると「随分とアグレッシブな投資スタンスだなぁ」と思わせるものだったので、講師(自らもVCを運営している弁護士。この辺もアメリカらしいですね。)に聞いてみたところ、成功するベンチャーの3分の1くらいはこの形でVCから投資を受けて事業をスタートさせているのではないかとのことでした。

個人的には結構凄い割合だな、と思ったのですがいかがでしょうか。

だって、単純に言ってしまえば、ビジネスモデルのプレゼンだけ聞いて、「よし、じゃあお前の会社に投資する」という決断をして、結構な金額を投資する(実際にはハードな交渉をして大部のドキュメンテーションをまとめ上げる作業がありますが)わけですから。そんなアグレッシブな投資スタンスは日本のVCではあまり聞いたことがないですね。

授業では、VCが新たに設立された組織の40%を100万ドルで引き受けるという例を出した上で、起業家側・VC側の立場からはどのようなCapital Structureがよいかという議論をしたのですが、講師の話によればアメリカのVCは1000万ドルくらいの金額でもStart-up investmentで出すことがあるとのこと。

投資判断をする段階で会社が存在しないわけですから、バリュエーションはどうするんだろうと思って聞いたところ、VCは過去の経験により投資対象が平均的な投資期間(VCにより3年や5年)経過後どのくらいの金額でExitできるかを予想し、自らの目標とするリターン率で割り引いた金額を提示するそうです。start-upの段階で投資するVCの目標は5年で800-1,000%だそうでして、「この会社は5年後に1億ドルでExitできる」と判断すれば、start-upの段階で例えば1,000万ドルを投資するとのこと。

「これによってアメリカは繁栄しているんだよ」と講師は言っておりましたが、親しい起業家の友人から聞く日本のベンチャーキャピタルの投資スタンスや投資規模との違いにただ驚くばかりです。

もっとも、投資はしたものの早々に見切りをつけて会社を清算するということもあるようでして、そのような場合に備えてVCは優先株や社債にLiquidation preferenceの条項を盛り込むことによって投資資金の回収を確実にするとのこと。
上述の例で言えば、VCが株式の40%を100万ドルで取得し、立ち上げから3ヶ月経過し資金が80万ドルまで目減りした後に、「やり始めてみたけどやっぱ無理そうだから清算しよう」という話になった場合、仮にVCが100万ドルの投資と見返りに40%の普通株式を取得していると80万ドルの40%=32万ドルしかVCの手元には帰ってこないことになります。
しかし元手の100万ドルを丸々投資したのはVCなので、VCが残額80万ドルを全額受け取るべきであり、そのために新規事業を清算する場合にはVCが投資額を先に回収し、余った残り(がもしあるのであれば)を株式の所有割合に応じて分配するというアレンジを取るようです(したがって、上述のVCが普通株式40%を100万ドルで取得するという例はVCにとっては望ましい投資スキームではなく、Liquidation preferenceを条項として織り込める優先株や転換社債での投資が望ましい。もっとも、デラウェア会社法下ではequity subordinationというコンセプトがあり、会社の大株主が同時に会社に貸付をしていた場合、当該大株主が会社に対して有する債権が一般債権者に劣後する形で取り扱われるリスクが存在する点には注意が必要)。

日本のVCの投資スタンスは、聞いたところでは「大手VCの○○さんが出資するのであればうちも」というところもあるらしく、VCによっては自分の頭で考えてリスク分析をした投資判断ではないそうで(もっとも銀行系のVCであったりすれば社内での調整等がかなり面倒ではないかと思いますので、仕方のない面もあるのかもしれませんが)。

アメリカでは、起業家側もVC側も競争が激しく、過去に会社を立ち上げてうまくExitさせた経験のある起業家の新規事業などではVCは投資条件をお互い競い合うらしく(したがって起業家が投資条件の交渉上優位に立つ)、存在するプレーヤーの数が多くマーケットが成熟しているために、前述した日本のVCのような他社追随型の投資スタンスでやっていけるVCはアメリカでは存在し得ないのかもしれません。

新聞等を読んでいると、やはりアメリカでも「ベンチャーに大金を投入するのはいかがなものか」という考え方もあるらしく、投資金額を日本のVC並みに抑えた投資をして成功しているVCもあるという話もあるようですが、起業家側でもVC側でもリスクを取って何かをやるということが受け入れられ、評価される社会は健全な気がします。

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東証による第三者割当規制

著名ブロガーである大阪は山口先生のブログや大杉教授のブログを見て知りましたが、東証が第三者割当に関する自主規制を検討しているようですね。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20080107mh01.htm

今日はこの点にフォーカスしてみようかと思います(なお、弁護士blogのお決まり文言ですが、当エントリーに記載する内容はLLM生としての私の個人的な見解であり、私が所属する団体の見解ではございません。また、私は日本法の専門家であるため、NYSEの自主規制等アメリカにおける規制の詳細については専門家にご相談下さい)。

東証が検討している自主規制はNYSEの自主規制を参考にしているのではないかと思われますが、NYSEの自主規制の文言は以下のようになっています。

New York Stock Exchange Listed Company Manual(原文はこちら)
312.03 Shareholder Approval

Shareholder approval is a prerequisite to listing in the following situations:

(c) Shareholder approval is required prior to the issuance of the common stock, or of securities convertible into or exercisable for common stock, in any transaction or series of related transactions if...(1) the common stock has, or will have upon issuance, voting power equal to or in excess of 20 percent of the voting power outstanding before the issuance of such stock or securities convertible into or exercisable for common stock...However, shareholder approval will not be required for any such issuance involving:

  • any public offering for cash;
  • any bona fide private financing, if such financing involves the sale of:
  • common stock, for cash, at a price at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock; or
  • securities convertible into or exercisable for common stock, for cash, if the conversion or exercise price is at least as great as each of the book and market value of the issuer's common stock.

ざっくり言えば、総議決権の20%以上の普通株式(あるいは普通株式にconvertすることが可能な証券)を発行する場合にはNYSEルール上事前の株主総会決議が必要ということです。

Corporationの授業で取り扱うケースなどでも、ホワイトナイトへの割当が行われるケースなどでは、当該ルールにより要求される株主総会決議を回避するために、発行する普通株式を19.9%に留めるなどの方策が取られていました。

私はコーポレートの弁護士であったので、留学前には種々の買収案件に関するアドバイスを提供していました。敵対的な買収を検討する場合、対象会社が取りうる対抗策とその可能性・防衛策としての有効性を必ず検討した上でクライアントに説明するのですが、防衛策として一番頭を悩ませるのが第三者割当なんですよね。

第三者割当の差し止めの根拠としては有利発行と不公正発行があるわけですが(株式につき会社法210条、新株予約権につき247条参照)、ベルシステム24等の先例が存在することから、たとえ相当数の株式を買い集めることに成功したとしても、第三者割当による大幅な希釈化(dilution)のリスクは拭い去れないわけで、第三者割当のリスクは買収者を踏みとどまらせるかなり大きな要因になっていたのではないかと思います。

防衛策としての第三者割当は日本以外ではあまり一般的ではないと思われるため、外人のボスや日本の状況をあまり知らない外人のクライアントなどに対して第三者割当が強力な防衛策として機能しうることを説明すると驚かれたりしました。

世界のM&Aマーケットを見ると国境を越えた企業の合従連衡が数多く目に付き、もはや日本もその趨勢を傍観しているわけにはいかない状況ではないかと思うのですが、このような状況の中で、日本特有の(しかも恣意的に行使される可能性が否定できない)防衛策が制約される方向で検討がなされることは、大きな視点で見ればよいことなのではないでしょうか(ロースクールの授業では"good for corporate America"という表現を使うことが多いので、"good for corporate Japan"といったところですかね)。

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抱負

2008年も既に半月ほど過ぎてしまいましたが、今年やろうと思ったことを書いておかないと忘れてしまいそうなので備忘程度に。

今年は英語の本を読もうと思います。途中でNY Barの受験が挟まるので月一冊読むのは難しいかもしれないけど、(ロースクールの指定教材を除いて)とりあえず2ヶ月で一冊、年間で6冊が目標。

なぜそう思ったかというと、ものを見る視点が日本語の本と英語の本では随分と異なり、新たな視点が得られるからです。

Nyt_book

現在は大学のBook Storeで安売りされていたこの本(法律の本ではなくビジネスに関する本なので、恐らくビジネススクールの指定書籍と思われる)を読んでいるのですが、日本では得られないアメリカにおける実際のケースに関する記述が多く(グーグル入社前のEric Schmidtが登場したりします)、新たな視点を得ることができそうな気がしています。

中国は上海で飲食店を構える友人が、以前
「商売とは特定の物・サービスが存在しない場所でその物やサービスを提供することである」
と話していたのですが、これは本質を突いていると個人的には思います。

そうすると、商売を繁盛させるには、自らがホームグラウンドとする場所に存在しない物やサービスをどれだけ見つけられるかが勝負になると思うわけです。

私自身はホームグラウンドは日本なので、日本に存在しない物やサービス、コンセプトをどれだけ知っているかが自らの価値を高めることになるかなと。それには旅をして色々な場所を見て回ることも大切ですが、やはり活字を読むことが重要ですよね。

この本を読むだけでも、「あぁやっぱりこういうビジネス(弁護士業界に関連するビジネスで、日本でも遅かれ早かれ登場すると個人的に考えているもの)はアメリカには存在するんだ」とか、色々と考えさせられることがあるので、今まで単眼だった視点を複眼にできる可能性があると思います。

さて、今年一年でどこまで視点を増やせるでしょうか。

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帰国

2008peru_131

11日間のペルー旅行を無事に終え、帰国しました。

ペルーは飯もうまいし、観光地はいずれも凄いところばかりだし、最高でした。

スケジュールはこんな感じ。

初日  午後NY発、深夜リマ到着
2日目 午前リマ観光
3日目 バスで移動後、セスナ機にてナスカの地上絵観光
4日目 バジェスタス島でアザラシ・フンボルトペンギン鑑賞ツアー後、バスでリマへ
5日目 クスコへ国内線で移動後、クスコ市内観光
6日目 マチュピチュツアー
7日目 聖なる谷観光(ピサック、オリャンタイタンボ等)
8日目 10時間の列車の旅でクスコからプーノへ移動
9日目 チチカカ湖観光(葦でできた人口の浮島群のウロス島+タキーレ島)
10日目 午前中のフライトでリマへ戻り、深夜の帰国便までフリータイム
11日目 帰国

近ツリNYによるよくできたスケジュールで効率よく回れましたが、コンパクトにまとまっているおかげで毎朝早起きだったので体調管理が大変でした(特にクスコ、プーノは標高が3500m前後なので、高山病にならないよう気を遣いました)。

気が向いたら旅行記的なエントリーをかいつまんでアップします。

ロースクールの授業は今週からスタートです。

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2007年を振り返る

Keystoneより無事に帰ってきたものの、妻共々疲労がかなり蓄積しているため、数日後に迫った南米旅行に向けて静養すべく二人して家に篭ってネトゲーにはまっているニートな日々を過ごしておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。

日本ではもう年が明けているようで。皆さまあけましておめでとうございます。

NYではまだ年が明けておりません。皆さま今年も一年お世話になりました。来年もよろしくお願い致します。

年中海外を飛び回っている友人が毎年年末ブログに今年一年の移動履歴を残しているんですが、今年は私もあちこち行ったので、ちょっと振り返ってみようかと。

1月 修習時代の同期とニセコへ。強風でリフトが止まっていたため巨大雪だるま作りに勤しむ最中に携帯を雪に埋めてしまう。

2月 武田信玄の隠し湯と言われる下部温泉に療養旅行。

3月 中学からの同級生と毎年恒例の麻雀旅行。今年は初の家族・彼女帯同。宿敵から親のタンヤオトイトイ清一色を直撃し留飲を下げる。

5月 結婚式の引き出物の仕入れも兼ねて道東(羅臼)旅行。修習時代からの知人である海産物卸のおっさんと海産物のパッケージについて打合せ。5末の結婚式後は箱根へ一泊旅行。 

6月 3月にクローズした大型案件の打ち上げと称してチーム一同で洞爺ウィンザーへ週末旅行。前の週に籍を入れた妻も帯同。

7月 北京経由でNY入り。万里の長城は凄かった。

8月 NY入りしてから一週間後にフロリダへ。キーウェスト、バハマ、オーランド(ユニバーサルスタジオ)と周遊。

9月 ナイアガラの滝へ。一瞬カナダ入り。

10月 ボストンへ行き、羅臼の知人に頼まれていたレッドソックスのTシャツを現地でゲット。

11月 ラスベガスからザイオン、ブライスキャニオン、グランドキャニオンと回る。

12月 Keystoneへ。高地でのスキーは幾度と体験しているものの、体力の衰えを実感。

Bar受験もあって来年前半は南米旅行以降あまりあちこち行けないと思われるものの、後半ヨーロッパ入りしてからは欧州内をあちこちと回っていることでしょう。

Ny11_128

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